コラム
個別支援計画で利用者の意向を反映することが難しい理由
利用者の意向に沿った支援計画と言うのは簡単だが、実際はそう単純ではない
個別支援計画を作成するとき、「利用者の意向に沿った内容にする」ということは、当然の前提として語られます。
実際、それ自体はその通りだと思います。
ただ、現場で支援計画を作っていると、この「利用者の意向に沿う」ということが、言葉ほど簡単ではないと感じることがあります。
利用者との関係構築がまだ十分ではなく、話を引き出すこと自体が難しいこともあります。
面談の場を設けても、利用者本人が積極的に話してくれるとは限りません。
そのため、支援計画を作る側としては、「利用者の意向に沿ったものを作りたい」と思っていても、そもそも何をどう受け取ればよいのかで迷うことがあります。
本心は、簡単には見えない
利用者の意向を確認すると言っても、それがそのまま本人の本心と一致しているとは限りません。
その場では無難に答えているだけかもしれない。
面談そのものを早く終わらせたくて、とりあえず返事をしているだけかもしれない。
本当は別の思いがあっても、言葉になっていないこともあります。
そもそも、自分以外の人の本心を完全に把握することはできません。
これは利用者支援に限らず、人と関わる以上、避けられないことだと思います。
だからこそ、利用者の意向を支援計画に落とし込むという作業は、単に聞いたことを書き写せば済むものではありません。
利用者本人が、支援計画作成に前向きとは限らない
支援計画を作る側は、面談や聞き取りを通じて意向を確認しようとします。
しかし、利用者本人からすると、その面談自体が面倒なものとして受け止められていることもあります。
- 事業所を利用できればそれでよい
- 工賃や給料がもらえればそれでよい
- 面談は必要だから応じているだけ
こうした受け止め方をしている利用者は、決して珍しくありません。
そうした場面では、こちらが質問を重ねても、十分に話が深まらないことがあります。
支援者としては何とか引き出したいと思っていても、うまくいかないことはあります。
それでも、事業所側の都合だけで作ってよいわけではない
ただ、本心が簡単には見えないからといって、事業所側の都合だけで支援計画を作ってよいわけではありません。
利用者の意向が見えにくいときほど、支援者側の見立てや現場都合が強く入りやすくなります。
その結果、本人のための計画というより、事業所として扱いやすい計画になってしまうことがあります。
利用者の意向を完全に把握することはできなくても、だからこそ、今見えている範囲で何を受け取り、何をまだ受け取り切れていないのかを意識しながら整理していく必要があります。
大切なのは、言い切りすぎないことかもしれない
支援計画を作る側としては、「この人の意向はこうだ」と整理したくなります。
そうしなければ、支援計画として形にならないからです。
ただ、ここで気をつけたいのは、見えている範囲をそのまま「本人の意向そのもの」と言い切りすぎないことです。
利用者の意向を十分に把握できているかどうかは、実際には簡単には分かりません。
それでも、その時点で見えている情報をもとに支援計画を作り、必要に応じて見直していく。
その姿勢の方が、かえって利用者に沿った支援計画に近づきやすいこともあるように思います。
利用者の意向に沿うとは、書き切ることではなく、見直し続けることでもある
個別支援計画において、利用者の意向に沿うことは大切です。
ただ、それは一度の面談で本心をすべて把握し、最初から正確に書き切ることと同じではありません。
むしろ、
- 今どこまで見えているのか
- 何がまだ見えていないのか
- 今後どこを確かめていく必要があるのか
そうしたことを意識しながら、支援計画を見直していくことの方が、実際には大切なのかもしれません。
個別支援計画は、本人の意向を簡単に書き切れる書類ではありません。
だからこそ、決めつけず、見えている範囲を丁寧に整理し続けることが、結果として利用者に沿った支援につながっていくのだと思います。