コラム
職員の退職後に見落とされやすい、人員配置と制度の話
職員が突然退職し、現場が一気に人手不足になる。 障害福祉サービスの現場では、決して珍しいことではありません。
まず頭に浮かぶのは、「今日のシフトをどうするか」「利用者対応を止めずに回せるか」といった、差し迫った現場対応です。
なんとかシフトを組み直し、残った職員で対応し、利用者対応も止めずに済んだ。 現場としては「ひとまず何とかなった」と感じる場面でしょう。
しかし、その裏で、制度上は静かにリスクを抱え込んでいる状態になっていることがあります。 現場が回ったことと、制度を満たしていることは、必ずしも一致しません。
なぜ制度上の問題に気づきにくいのか
職員が急に退職すると、現場は一気に緊張状態になります。 とにかく今日・明日の支援をどう維持するかが最優先になり、制度まで意識が回らなくなるからです。
- 退職対応やシフト調整に追われ、確認作業が後回しになる
- 人員配置基準や加算要件を見直す時間が取れない
- 「一時的なことだから」と判断してしまう
現場判断としては自然でも、制度上は別の評価がされます。 「現場は回っているが、制度上は満たしていない」というズレが、ここで生じます。
阪神間地域の事業所でも、同様の相談は少なくありません。
見落とされがちな制度上の影響
人員配置に関する基準は、運営指導でも重点的に確認される分野です。
- 大きな減算を受ける可能性がある
- 有資格者配置による加算や、加配加算の要件を満たさなくなる
- 結果として、過去に遡って返戻を求められることがある
特に注意が必要なのは、「意図的な違反ではない」ケースです。 現場を守ろうとした判断が、後になって経営リスクとして表面化することがあります。
考え方と対応の整理
重要なのは、トラブルを完全に防ぐことではありません。 起こり得る前提で、制度とのズレを早めに把握することです。
- 毎月、人員配置を確認する
- 加算要件・減算要件を正しく理解しておく
- 退職や異動があった時点で、制度上の影響を確認する
「現場が何とかなったか」と「制度を満たしているか」は別の軸です。 この視点を持てるかどうかで、リスクの大きさは大きく変わります。
当事務所のサポート
当事務所は、職員の退職や人員配置の変動によって、知らないうちに減算や返戻を受けることがないよう、運営指導まで見据えた運営の整理をサポートしています。
具体的には、次の点を重視しています。
- 職員の退職・異動が制度上どのような影響を与えるかの整理
- 人員配置基準、加算要件、減算要件の確認と整理
- 運営指導時に説明できる状態を前提とした運営状況の可視化
また、加算や減算の仕組みを表面的に覚えるのではなく、 現場判断と制度判断のズレがどこで生じやすいのかを一緒に確認しながら、制度を正しく理解するためのサポートを行っています。
職員の退職は、どの障害福祉サービス事業所にも起こり得ます。 問題になるかどうかは、その後にどう整理し、どう判断したかによって変わります。 日常の運営を整えることが、結果として一番のリスク対策になります。
おわりに|「何とかなった」と感じたあとに、確認してほしいこと
職員が突然退職し、それでも現場を止めずに回し切れたとき、 管理者やサービス管理責任者は大きな安堵を感じると思います。
その判断自体が間違っているわけではありません。 現場を守るために、まず動くことは必要です。
ただ、制度は「その場を乗り切れたか」ではなく、基準を満たしていたかどうかで評価されます。 現場が落ち着いたあとに、制度上どう見られる状態だったのかを整理しているかどうかで、後からの負担は大きく変わります。
退職や異動は、どの事業所でも起こり得る出来事です。 だからこそ、特別な対応ではなく、「変化があったら一度制度を確認する」という習慣が、結果として一番のリスク対策になります。
現場対応と制度対応は、同時に完璧である必要はありません。 ただ、どこかで必ず照らし合わせる視点を持っておくこと。 それが、後から「知らなかった」「想定していなかった」と追い込まれないための、現実的な運営につながります。