コラム
運営指導で行政に説明するとき、感覚だけでは通りにくい理由
現場には、現場の感覚がある
行政から何か指摘を受けたとき、現場としては「いや、でも実際はこうなんです」と言いたくなることがあります。
前からこのやり方で回っている。以前は別の担当者にこう言われた。現場では、この運用で特に問題は起きていない。
そうした感覚が出てくること自体は自然なことだと思います。
実際、制度の運用は現場の中で積み重なっていくため、机上だけでは見えない事情があることも少なくありません。
ただ、その感覚だけでは話が進みにくい
一方で、行政とのやり取りでは、その「現場の感覚」だけでは前に進みにくいことがあります。
なぜなら、行政が見ているのは、
- 現場でどう感じているか
- 今まで何となく回っていたか
ではなく、
- どの基準に基づいているか
- どの条文や通知を前提にしているか
- その運用をどう説明できるか
だからです。
そのため、「前はこうでした」「現場ではこうしています」「そこまで厳密にしなくても大丈夫ではないですか」という返し方では、違和感は伝わっても、整理は進みにくいことがあります。
感覚で返すと、反論ではなく感想になりやすい
行政に対して何かを伝えるとき、現場の実感を持つこと自体は大切です。
ただ、それをそのまま返すだけでは、反論というより感想に近くなりやすい。
行政側からすると、「そう感じていることはわかった」「ただ、制度上はどう整理するのか」という話になるからです。
つまり、現場の感覚が間違っているというより、感覚だけでは制度上の整理に届きにくいということです。
前に進めるには、根拠をもとに前提を整える必要がある
こうした場面で必要になるのは、感覚で押し返すことではありません。
- どの点に違和感があるのか
- その違和感は制度上どこに関係するのか
- こちらはどの根拠でそう考えるのか
を整理したうえで、前提を整えていくことです。
反論というと、行政に対して強く言い返すことのように聞こえるかもしれません。
しかし実際には、言い負かすことではなく、どの基準で話しているのかを揃える作業に近いのだと思います。
根拠を示すことで、整理が通ることもある
実際、行政から誤った指導を受けた場面でも、根拠条文やQ&Aを示し、制度上こちらの整理が成り立つことを確認できたことで、事業所側の考えで進められたことがありました。
このときも、単に「それは違うと思います」と返していたら、おそらく前には進まなかったと思います。
大事だったのは、
- 条文上どう読めるのか
- 通知やQ&Aではどう整理されているのか
- こちらの運用がその範囲に収まっているのか
を示せたことでした。
つまり、通ったのは感覚ではなく、整理された根拠の方です。
自分たちのやりたいことを通したいなら、なおさら制度に沿う必要がある
事業所としては、自分たちの運営上の考えや事情を踏まえて進めたい場面があります。
それ自体は当然のことです。
ただ、その考えを行政とのやり取りの中で通したいのであれば、制度から離れた主張ではなく、制度の中で成り立つ説明にしなければなりません。
言い方を変えれば、やりたいことを通すためにも、制度に則って整理する必要があるということです。
その意味で、行政とのやり取りは、感覚で押し切る場面ではなく、前提と根拠を整えて協議する場面だと言えます。
大切なのは、言い返すことではなく、前提を揃えること
行政とのやり取りで大切なのは、強く言い返すことではありません。
- 今、何が問題になっているのか
- その問題は制度上どう見えるのか
- こちらはどの根拠でどう整理しているのか
そこを揃えていくことです。
感覚だけで返すと、事業所が納得していないという話で終わりやすい。
一方で、根拠をもとに整理して返すことができれば、少なくとも何を前提に話しているのかは共有しやすくなります。
行政とのやり取りは、敵味方の話ではなく、制度の前提をどう揃えるかという話でもあります。
そう考えると、感覚ではなく、根拠と整理で向き合うことの大切さが見えてくるのではないかと思います。