コラム
運営指導で行政の対応が厳しく感じるときに考えたいこと
行政が厳しく見える場面は、珍しくない
障害福祉の現場では、行政の対応が厳しく見えてしまう場面があります。
例えば、
- 報酬の返戻を求められたとき
- 加算申請を受理してもらえなかったとき
- 指定申請で何度も修正を求められたとき
- 運営指導の場で、行政職員から細かく質問を受けたとき
こうした場面では、事業所側としては「そこまで厳しく見られるのか」と感じやすくなります。
特に、運営指導のように緊張感のある場面では、何気ない質問であっても、追及されているように受け取ってしまうことがあります。
その積み重ねが、「行政は敵なのではないか」という感覚につながることもあります。
同じ言葉を使っていても、前提が違う
行政とのやり取りで話が噛み合わなくなる理由の一つは、同じ言葉を使っていても、前提が違うことです。
そのズレが表れやすいのが、福祉特有の専門用語です。
業界の中では当たり前に使われる言葉でも、その意味を十分に整理しないまま使っていると、行政との会話の中で認識がずれやすくなります。
さらに混乱しやすいのは、日常語のつもりで使っていた言葉が、制度上は別の意味を持っている場合です。
事業所側としては普通に話しているつもりでも、行政側は制度上の意味で受け取っている。
この状態では、会話そのものが噛み合いにくくなります。
行政が厳しいというより、そもそも見ている前提が違う。
ここが整理されていないと、行政とのやり取りに身構えてしまいやすくなります。
行政は、現場の感覚ではなく制度の前提で見ている
現場には現場の感覚があります。
前からこのやり方で運営している。
実際には大きな問題は起きていない。
以前は別の担当者から特に何も言われなかった。
こうした感覚は、現場にいるほど自然に出てくるものです。
ただ、行政が確認しているのは、その感覚そのものではありません。
- 制度上、要件を満たしているか
- その前提を説明できるか
- 書類や運用が基準と整合しているか
行政は、この視点で見ています。
そのため、現場としては当然だと思っていることでも、制度上は整理が足りないと判断されることがあります。
このとき、事業所側からすると「わかってもらえない」と感じやすくなります。
厳しく見えるのは、悪意があるからとは限らない
行政が厳しく見える場面はあります。
ただ、それがそのまま「悪意がある」という話になるわけではありません。
行政は、制度に基づいて指定や加算、運営の可否を判断する立場です。
そのため、要件が足りなければ受理されないこともありますし、前提が整理できていなければ修正を求められることもあります。
事業所側からすると不親切に見える場面もあるかもしれません。
それでも、行政としては感情で動いているのではなく、制度上どこまで整っているかを確認していることが多いものです。
行政が厳しく感じられるのは、相手に悪意があるからというより、事業所と行政とで見ている前提が揃わないまま、やり取りが進んでしまうから、ということも少なくありません。
前提が揃うと、やり取りは進みやすくなる
実際には、行政としっかり前提を揃えてやり取りすることで、話が進みやすくなることもあります。
例えば、指定申請の場面で、行政から「このままでは指定を出せない」と言われる事情があっても、その時点で状況を共有できれば、どこを見直せばよいのか、何を追加で整えるべきかが見えてきます。
また、こちらが制度の前提を押さえたうえで話をしていれば、行政側にも「制度に沿って進めようとしている事業所」だということが伝わりやすくなります。
少なくとも、感情的に押し返すやり取りではなく、何をどう整理するかという話として進みやすくなります。
行政は、敵か味方かで捉えるより、制度上の前提を確認しながら整理していく相手として見た方が、実際のやり取りには近いのかもしれません。
対立ではなく、前提を揃える相手として見る
行政とのやり取りを、敵か味方かという構図だけで捉えると、話は止まりやすくなります。
大切なのは、
- 行政が何を基準に見ているのか
- 事業所側は何を前提に話しているのか
- その間にどんなズレがあるのか
を整理することです。
前提がずれたままだと、何を言われても厳しく感じられやすい。
一方で、前提を揃えていく視点が持てると、同じやり取りでも受け止め方は変わってきます。
行政は、事業所を困らせるために存在しているわけではありません。
制度の前提を共有しながら、適正な運営ができるかを確認する相手でもあります。
行政が厳しく見える場面では、相手の姿勢だけを見るのではなく、どの前提が揃っていないのかを確認してみることも大切です。